Message from President

トップメッセージ

トップメッセージ

日本発のエネルギー共創企業を目指して

写真

統合新社の経営ビジョンへの想いを聞かせてください。

日本のエネルギーセキュリティという重責を担うに足る強固な経営基盤をつくるために、私たちは経営統合の道を選びました。統合したからには、規模の経済による統合シナジーの創出、競争力強化を狙うのは当然のことです。とはいえ、経営統合はあくまで手段であり、目的ではありません。統合によってそれぞれの会社が大事にしてきたものが失われるようなことがあっては本末転倒です。そこで、両社の歴史をひもときながら、我々は何のために存在するのか、ステークホルダーの皆さまに何を期待されているのか、どういった点に独自性があるのかといった根源的な問いを元に、あるべき姿を丁寧に議論してきました。

経営ビジョン

私たちは、ダイバーシティ&インクルージョンをもとに、環境・社会と調和を図りながら、お客様・ステークホルダーとともに、新たな価値創造に挑戦し続ける日本発のエネルギー共創企業です。

一見すると長く感じるこの経営ビジョンの一言一句に私たちの想いを込めています。特にポイントとなるのは、後半の「新たな価値創造に挑戦し続ける日本発のエネルギー共創企業」の部分です。

統合新社の前身である出光興産、昭和シェル石油は共に明治時代の日本で創業し、いち早く石油製品の販売に取り組み、戦中・戦後の激動の時代を通じて日本のエネルギーセキュリティのために闘ってきた歴史を持つ会社です。そして、常にあるべき社会の実現に向けて新しい価値の創出に挑戦し続けてきました。例えば、日本で暖房用・照明用のケロシン油(灯油)の販売を始めたのは昭和シェル石油の創業者の一人であるマーカス・サミュエルです。世界的に石油の自由な貿易が始まるきっかけとなった日章丸事件の陣頭指揮を執ったのは出光興産の創業者である出光佐三です。出光佐三は、その後も世界最大の大型タンカーの建造、世界初の重油直接脱硫装置の建設などに挑み続けました。統合新社はこうした創業者たちのDNAを引き継ぎ、会社のコア・バリューとしています。

「日本発」は当社グループの技術やノウハウを海外のビジネスチャンスに生かしていく意志を表しています。日本の環境・安全規制、品質・サービスの要求水準の厳しさは、世界でもトップクラスといわれています。これらを通じて鍛えられ、蓄積してきた日本発の技術力、商品・サービス、ビジネスノウハウを生かして、各国・地域の発展や社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。その例として、経済成長の著しいアジアを中心とした新興国において、燃料油のサプライチェーンを構築することが挙げられます。

「共創」には、お客さま、地域の皆さま、全てのビジネスパートナー、そして当社グループの強みであり、財産である従業員と共に新たな価値を創り上げていこうという想いを込めています。私は、これまでの延長線上に未来はないと考えています。新たな価値を創出していくためには、多様なステークホルダーの皆さまとの協働が必要不可欠です。

「ダイバーシティ&インクルージョン」「環境・社会との調和」については別の項でお話しします。

「人が中心の経営」について聞かせてください。

両社が大事にしてきた共通の価値観がもう1つあります。それは、「人が中心の経営」という考え方です。誤解を恐れずに申し上げれば、私は、世の中に役に立つ、尊重される人の育成こそが当社グループの究極の目的であり、事業はそのための手段だと考えながら経営しています。これは、企業価値最大化のために人材育成をするという考え方とはスタンスが異なります。例えば、リスクが限定的でリターンが多い投資を重ねていけば、企業価値の向上を図れるかもしれません。しかし、私たちは基本的に人の育成につながらない投資は行いません。あくまで、従業員が各事業に直接携わり額に汗かきながら、幾多の困難を乗り越え、さまざまな経験を通じてたくましく成長していくプロセスを重視しています。

これは単なるきれいごとや理想論で言っているのではありません。乱気流のように変化する経営環境の中で、経営陣だけで、同時多発的に発生するさまざまな課題に対し迅速かつ適切に対応していくことは端から困難です。多くの場合、現場をよく知る一騎当千の従業員を信頼し、彼らの判断に委ねていった方が効率的・効果的です。また、現在の延長線上にない未来を描いていくためには、多様なバックグラウンドを持った従業員によって絶えず新風を吹き込んでもらう必要があります。「人の育成」は究極の経営目的であると同時に、当社グループの発展に必要不可欠な経営の原点でもあるのです。

こうした考えから、統合新社のスローガンとして「人は、無限のエネルギー。」を掲げました。これは、自らの能力に限界を設けず、一人ひとりが能力を最大限に発揮するとともに、組織全体、サプライチェーン全体のチーム力を高め、社会発展に貢献し、そのことを通じて自らの人生をより豊かなものにしていくことを表しています。同時に、人そのものが持っているエネルギーの尊さや、当社グループのエネルギー企業としての使命も表現しています。

人の力が経営の活力の源泉になるという考え方を基に、社員が活き活きと働くことができる環境を整えることが私たち経営陣の最大の責務であり、その結果、持続的な成長を促し、ひいては資本市場での魅力を高めることにつながっていくと考えています。

中期経営計画の基本方針を教えてください。

国内の石油製品需要は、1999年にピークアウトし、人口減少やエコカーの普及により漸減傾向にあります。今後その傾向は加速し、自動車の所有から共同利用への変化などが相まって、2030年には現状比3割減少すると見込まれています。また、エネルギー供給事業者として気候変動問題への対応は重要かつ喫緊の課題であり、燃料油、石油開発、石炭といった事業群に過度に依存した状態を継続していくことは困難だと認識しています。そこで、30年先の2050年においても当社グループが隆々とした企業グループであり続けるために、いつまでに何をどのように変えていかなければならないかという観点から、今回の中期経営計画策定に取り組み、2019年11月に経営統合後初となる中期経営計画(2020~2022年度)を発表しました。手順としては、まず、パリ協定を踏まえて2050年までの事業環境シナリオを複数描きました。その結果、2050年の環境想定が極めて不透明な一方で、2030年まではいずれのシナリオもほぼ同じ軌道を描くことから、2030年をマイルストーンとして経営目標を設定することにしました。2030年を分岐点として、それ以降どのように環境が変化したとしても、柔軟に対応できるような体制を整えるためです。そして2030年の経営目標からバックキャストして中期経営計画を策定しました。

2030年に向けた基本方針は、「レジリエントな事業ポートフォリオの実現」と「社会の要請に適応したビジネスプラットフォームの構築」の2点です。ここでは、前者についてお話しします。

繰り返しになりますが、基本的な考え方は、どのように環境が変化しても、柔軟かつ強靭に対応できる企業体を目指す、そのために「収益基盤事業の構造改革」「成長事業の拡大」「次世代事業の創出」を推進していくことです。収益基盤事業では、向こう10年間は、燃料油事業においてキャッシュフローを確実に確保していくため、多種多様な策を講じていきます。統合シナジーの最大化を図るとともに、製油所の国際競争力を強化し、2030年度にはグローバルでトップクラスの稼働信頼性と保全コスト効率性を実現します。その上で、競争力ある製油所のポテンシャルを生かしつつ、成長するアジア需要に応じて、引き続き海外事業を拡大していきます。また、ニソン製油所の収益貢献化を早期に達成していきます。成長事業と位置付ける分野においては、収益基盤事業で獲得したキャッシュフローを元に、高機能材事業などでM&Aを活用しながら事業領域および規模の拡大を図ります。2030年の事業ポートフォリオは、燃料油、石油開発、石炭といった収益基盤事業の営業利益+持分法投資利益ベースで、2019年度の60%から全体の半分以下とし、成長事業と位置付ける潤滑油や機能化学品、有機EL材料を中心とした電子材料、アグリバイオ事業、全固体リチウムイオン電池材料などの高機能材事業を全体の30%以上まで拡大していくことを目標として掲げました。

さらに次世代事業の創出に向けて、社会の変化や顧客ニーズの多様化、脱炭素化の進展を見据えながら、SS(サービスステーション)の次世代業態開発や分散型エネルギー事業開発、サーキュラービジネスといったエネルギーを取り巻く新しい需要に対応するビジネスモデルの開発に取り組んでいきます。

もう一点、デジタル変革への対応についても触れておきます。当社グループは、2020年1月に専門部署として「デジタル変革室」を設置しました。コア事業のデジタル化による業務効率化、新たな顧客価値創出、まったく新しいビジネスの創造の3点が設置目的であり、グループ横断的な活動を期待しています。

中期経営計画におけるキャッシュバランスはどのようにお考えですか?

今回の中期経営計画では3年間累計で4,800億円の純利益を見込み、キャッシュインは減価償却費や資産売却などと合わせて1兆300億円を確保します。

一方、キャッシュアウトについては、M&A財源を含めた設備投資に6,300億円、株主還元に2,000億円を充てる前提を置いています。株主還元後のフリーキャッシュは2,000億円の見込みです。この用途については、収支状況などを総合的に勘案した上で、成長分野への戦略投資、財務体質の強化、あるいは2022年度以降の株主還元を拡充する原資のいずれかに充てることを決定したいと考えています。

当社グループは、株主還元を経営上の重要課題と認識しており、2019年度から2021年度までは総還元性向50%以上の株主還元を実施していきます。2022年度以降については2021年度に方針を決定する予定です。

ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを教えてください。

中期経営計画の基本方針のもう1つが「社会の要請に適応したビジネスプラットフォームの構築」です。

地球環境・社会との調和はエネルギー供給事業を営む当社グループとして、最優先で取り組むべきテーマだと認識しています。今回の中期経営計画において、まずSDGs(持続可能な開発目標)で掲げられた目標と個々の事業を関連付け、当社グループとして重点的かつ具体的に取り組むべき重点課題(マテリアリティ)を明確にしました。次に、GHG(温室効果ガス)削減目標を設定しました。2030年の具体的目標は、自社Scope1+2のCO2排出量を200万t-CO2(2017年比▲15%)削減することです。この目標は、パリ協定に対する日本の約束草案を踏まえた石油業界の削減目標(2010年対比 原油換算100万kL、約▲270万t-CO2)のレベルを上回るものです。かなり挑戦的な目標値ですが、当社グループの総力を挙げて達成していきたいと考えています。

また、「安全の確保」と「品質保証」が枢要な課題であることは申し上げるまでもありません。製油所・事業所の安全・安定操業を継続し、地域の皆さまから信頼を得ながらエネルギーを安定して供給し続けることが、当社グループの社会的使命であり、経営の根幹を成すものと認識しています。引き続き、無事故への挑戦という目標を掲げ、保安力の向上、安全文化の醸成に取り組んでまいります。経営統合によりグループの製油所数が増えました。早くも各製油所間のコミュニケーションが活発に行われており、リスクマネジメントを基軸に安全・保安、品質、保全といった製造現場共通の課題とその対策を学び合う機会が生まれ、保安管理や品質管理が一層強化されているという手応えを感じています。多岐にわたる当社グループ製品全体への目配りを怠ることなく、引き続き、製品の安全性確保とサプライチェーン全体での品質保証に全力を傾注していきます。

最後に、「ガバナンスの進化」についてお話しします。取締役会の活性化・機能強化に向け、独立社外取締役3分の1以上を継続するとともに、こうした外形的基準だけでなく、スキルマトリックスを用いて取締役会総体としての最適な体制を追求しています。現在13名のうち5名が社外取締役で構成されており、中期経営計画の策定に当たっても、それぞれの専門的な視点からアドバイスを頂きました。

ダイバーシティ、働き方改革、業務変革への取り組みを教えてください。

経営ビジョンの冒頭に「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げています。現状の延長線上に未来はなく、その中で大きく事業構造を変革していこうとすると、時に過去の成功体験や知見が変革の妨げになる場合があります。また会社として懸命に蓄積してきた強みが、一瞬にして弱みに変わることもあります。そのような時代に我々はどう対応していけばよいのでしょうか。私は、多様な視点や価値観、多彩な力を取り入れ、個々の潜在能力を最大限に引き出しながら化学反応を起していくことが1つの解になると考えています。だからこそ、ダイバーシティ&インクルージョンが重要なのです。

一般的にダイバーシティ&インクルージョンは、多様性を認め、受け入れることと定義されていますが、これだけでは曖昧模糊としています。当社グループでは、ワークライフバランスを実現できる環境の下、個人の力を向上させる時間を創出すること、従来業務を効率化して社外と接点を持つ時間を創出し、知と知を結び付け新たな価値を創造することとした上で、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。加えて申し上げれば、一人ひとりの力は、個人の生活の充実はもちろん、健康があってこそ発揮できるものです。ダイバーシティ&インクルージョンの推進と併せて、心身共に健康で活き活きと働くための健康づくりも経営上の課題に位置付け、健康経営を推進しています。

他方、当社グループの競争力向上には、業務変革の加速が不可欠です。そのために大きな役割を果たしているのが、「Nextフォーラム」です。2019年2月から社員と経営層がダイレクトにコミュニケーションを取るNextフォーラムの開催を始めました。各部門から選任されたフォーラム委員が職場の声を集め、全社的に課題と思われるテーマについて7~8人で1グループとなり、そこに役員も入って積極的な意見交換を行い、最終的に提案をまとめます。その成果の1つに、Nextフォーラムなどが契機となって「DTK(だったらこうしよう)プロジェクト」が立ち上がりました。DTKプロジェクトは、仕事の進め方やシステムの一本化はもとより持続的・自律的な業務改革活動を企業文化にしていくことを目的としています。全社員で業務の効率化、働き方改革に取り組み、いかなる課題に直面しても全員でとことん議論して「だったらこうしよう」と柔軟な発想で解決策を考え、決めたことを一丸となって実行していきたいという想いを込めて名付けました。

このような活動によって削減できた業務時間を、個人個人がより高付加価値な業務の遂行に振り向ける、自己開発の時間に充てる、プライベートを充実させることで、モチベーションや能力が向上し、ひいては成長分野の拡大や次世代事業の創出につなげていければと考えています。並行してRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入をはじめとするデジタル化、BPR(ビジネスプロセス・リデザイン)、多様な働き方を可能にするスマートワークの取り組みも始まっています。

私は、どんな環境変化があっても、鍛え抜かれた尊重される人が育っていれば、いかなる困難も乗り越え、必ずや新しい時代を切り拓いていくことができると信じています。

これからの社会における出光グループの役割をお聞かせください。

昨今、地震、台風などの災害が日本列島を襲い、国民のライフラインが脅かされています。日本のエネルギーセキュリティを支え、国民のライフラインを守ることが当社グループの社会的使命です。有事の際の対応を含め、サプライチェーンの維持・強化に取り組んでまいります。その責を果たすためにも、全国を網羅しているSSネットワークをこれ以上減らすことなく、各地域のニーズに応える新しいサービス、ビジネスモデルを生み出していかなくてはならないと考えています。

長年にわたり自由競争という名の過当競争を繰り返してきたこともあり、ピーク時には全体で約6万カ所あったSS数も3万カ所程度へと半減しています。特に山間部など郡部のSSが減少しています。今後10年間で石油製品需要が3割減少すると仮定すると、このまま手をこまねいていては、SS数のさらなる減少は確実なものとなります。当社グループは、SSにできることは何かを徹底追求し、SSの付加価値を向上させることで、ネットワークの維持・強化を図っていきます。公共交通機関がなく、移動手段としての自動車が生活に欠かせない地方の町や村、高齢化が進む過疎地域では、SSは重要な社会インフラです。一例として、超小型EVを活用したMaaS(Mobility as a Service)事業の実証をスタートさせています。これは高齢者などの交通弱者にとって心強い取り組みだと各方面から高い評価を頂いています。さらにデジタル技術を駆使し、顧客基盤を活用した新たなサービスの創出に挑戦しています。私たちは、ラストワンマイルという視点から、SSは大きなポテンシャルを持ち、さまざまな業態を展開できる余地があると考えています。

ステークホルダーへのメッセージをお願いします。

今回の中期経営計画の策定に当たって、当社グループは2050年までのエネルギー需要を中心としたシナリオ分析を行いました。これは現時点で得られた情報を基に作成した仮説であり、今後も継続して情報を収集・分析しブラッシュアップしていく必要があります。いかなる環境変化に対してもしなやかに強靭に対応できるレジリエントな事業ポートフォリオを構築していく所存です。中期経営計画の進捗についてはタイムリーに皆さまに報告していくとともに、戦略を考える上で前提としていた部分が変わった際は速やかにお伝えしていきます。

世界の人々が文化的な生活を営むためにはエネルギーが不可欠であり、現時点で石油、石炭は一次エネルギーとして必要とされるエネルギー源です。しかし、化石燃料を主力製品としている当社グループにとって、気候変動への対応は避けられない課題です。今回、困難を承知でGHG排出削減目標を設定したのはこうした当社グループの覚悟の表れです。また、太陽光、地熱、バイオマス、風力など再生可能エネルギーに関連する事業に積極的に取り組み、海外における再生可能エネルギーなどの総電源開発量を2030年に5GWとする方針を中期経営計画に掲げています。エネルギー需要構造の変化を見極め、その時、その地域で必要とされるエネルギーの安定供給に努めるとともに、地球環境問題にも果敢に取り組みます。

経営統合による人や事業のシナジー効果を最大限に追求しながら、「日本発のエネルギー共創企業」として、全てのステークホルダーの皆さまと共に新たな価値創造に挑戦してまいります。ぜひ、皆さまから当社グループに対し、忌憚のないご意見・ご要望をお寄せいただきたいと思います。引き続き格別のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

写真

出光興産株式会社
代表取締役社長

木藤俊一

出光昭和シェル, 株式会社ディ・エフ・エフ