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トップメッセージ

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「人が中心の経営」で、新しい価値を創出し、サステナブルな
社会の実現に貢献し続けます

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新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症に罹患された方々、ご家族・関係者の皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。また、最前線で懸命に治療に当たっていただいている医療従事者の皆さまに心より敬意を表します。

当社グループはコロナ禍にあっても、石油製品・エネルギーの安定供給を通じて国民のライフラインを守るという社会的使命を果たすべく、2020年2月に対策本部を設置し、諸施策を検討・実施しました。感染拡大防止策として、製油所・工場などの製造拠点においては、操業に携わる者から感染者を出さないことを念頭に、徹底した感染予防に取り組み、万が一感染者が出た場合でも操業停止に至らぬよう体制を整えて事業活動を展開してきました。2020年6月中旬から9月上旬にかけて実施した、北海道製油所の定期補修工事(SDM)においては感染者の発生もなく、定期補修を無事終えることができました。お客さまと間近に接する機会の多いSS(サービスステーション)においてもスタッフの検温など健康状態を毎日確認し、こまめな手洗いや消毒を徹底しています。全国6,400カ所のSSを筆頭に、物流や設備メンテナンス会社の協力を得て、製造から物流・販売に至るサプライチェーンの維持と、製品の安定供給に努めています。

コロナ禍の下で、世界レベルで人の移動が制限されたことにより、石油製品の需要が大きく落ち込みました。特にジェット燃料については、前年比8割減の状態がしばらく続きました。国内路線は回復基調にあるものの、前年の4割程度までしか回復していません。人々の暮らしに身近なガソリンについては、5月の大型連休や8月の帰省時期の外出自粛の影響を受けました。端的な例として、高速道路に設置されているSSでは売上が前年比5割減に落ち込みました。トラックなどのディーゼルエンジン燃料の軽油については、経済活動の停滞に伴い需要が減少する時期もありましたが、巣ごもり消費に伴うスーパーマーケット向けの輸送や通信販売などの増加を受けて、他の油種に比べれば需要の落ち込みは少なく済んでいます。

一方、自動車の製造・販売台数やディスプレイ需要の減少などにより、潤滑油や機能化学品、電子材料の需要が減少しています。結果的に、新型コロナウイルス感染拡大により世界経済が停滞し、当社のほぼ全ての事業が少なからず影響を受けていると認識しています。

新型コロナウイルス感染症の収束については、いまだ先を見通せる状況にはありませんが、厳しい事業環境が今後とも続くと覚悟した上で、業務プロセスの改革、デジタル化の推進、コスト競争力強化など、我々自身でできることに注力してまいります。

中期経営計画の進捗

2019年11月に発表した中期経営計画(2020~2022年度)は具体的な数値目標のある事業計画と、2030年をマイルストーンに据えた事業構造改革の方向性の2本立てで構成されています。まず事業計画に関しては、今回のコロナ禍がもたらした石油製品などの大幅な需要減少や原油価格の急落により、数値目標の達成は率直に言って厳しい状況です。コロナ禍の下での事業環境変化、エネルギー基本計画の動向も踏まえ、中期経営計画を見直しの上、開示させていただく予定です。

ただし、仮に2022年までの数値目標を下方修正したとしても、2030年に向けた方向性や戦略を大きく見直すことはありません。むしろコロナ禍に直面して、改革に向けた動きを加速していかなければならないという思いを強くしました。

中期経営計画にて基本方針に掲げる「レジリエントな事業ポートフォリオの実現」に向けて、私自身3段ロケットと呼んでいる3つの施策、「収益基盤事業の構造改革」「成長事業の拡大」「次世代事業の創出」を通じて、事業構造改革を加速させていきます。

まず「収益基盤事業の構造改革」についてですが、燃料油事業においては、内需減少が続く中で、将来的に製油所の統廃合が課題になってくると考えています。当社単体で、いかに競争力を高められるか、AIやデジタル技術の活用による業務プロセスの改革に注力するとともに、近隣の製油所や石油化学コンビナートとの連携を強めることで、国際競争力を向上させるアプローチが必要になってくると考えています。2020年11月に公表した愛知県の製油所に関する案件はその一例です。これらにより、当社グループの事業を支える収益基盤の安定化を図ります。なお、ベトナム・ニソン製油所については、マーケット要因で厳しい収益状況が続くものの順調に稼働しており、収益改善策も着実に進捗しています。

 

次に「成長事業の拡大」については、今後も需要伸長が期待できる商材の海外展開として、潤滑油中国第二工場(恵州)や有機EL材料製造工場(成都)の稼働開始など着実に歩みを進めています。また、環境対応ビジネスについても、全固体リチウムイオン電池の実用化に必須となる固体電解質の小型量産設備の新設や、バイオマス発電燃料用植物の植生試験および木質ペレット化試験の開始等々、当社グループで長年にわたり手掛けてきた研究開発の事業化が加速するなど、これまで撒いてきた種が結実しつつあります。

2030年以降の事業化を企図している「次世代事業の創出」については、収益基盤事業、成長事業からの飛び地ではなく、既存事業のリソースを生かしながら、想定される社会課題に対するソリューションを事業化するという考え方の下、検討を進めています。

第一のテーマは「地方創生」です。人口減少、少子高齢化が同時進行する中で、当社グループは6,400カ所のSSネットワークを単なる石油製品の販売拠点ではなく、各地域の暮らしと移動を支える社会インフラへ進化させていきたいと考えています。紙幅の関係から全てをお話しできませんので、一例として超小型EVについてご紹介します。驚くべきことに2019年だけで60万人の高齢者が免許を自主返納しています。この中には公共交通機関に乏しい地方都市在住の方が多く含まれており、日々の買い物や病院に行くことさえ難しくなっています。こうした交通弱者に対し、行きたい時に行きたい所へ移動する手段を提供するのが超小型EVです。現在、岐阜県飛騨市・高山市、千葉県館山市で超小型EVを活用したカーシェアリング「オートシェア」の実証実験を展開しています。なお超小型EVや充電ポートの実用化に際しては、当社グループで開発を手掛けるリチウム電池用の固体電解質やEVの筐体向けに開発中の高機能プラスチックを採用するといった事業展開も想定しています。

第二のテーマは「カーボンニュートラル社会への貢献」です。当社は、菅首相が2050年カーボンニュートラルを表明されたことを事業構造改革や技術開発の好機と捉えており、再生可能エネルギーの開発、蓄電池関連事業、カーボンリサイクル、ソーラーパネルといったサーキュラービジネスなどを一段と加速、推進していきたいと考えています。

また2020年1月に立ち上げたデジタル変革室の下、事業所保全業務のデジタル化といった業務の高度化・効率化をはじめ、SS顧客基盤を活用したデジタルマーケティングの導入や企業間連携によるスマートシティプロジェクト「SmartCityX」への参画など、新たなビジネスの創出にも取り組んでいます。

社員同士の「包摂」を広げる統合2年目

統合新社が誕生した当時は、統合や融和をキーワードに盛り込んだメッセージを意識的に社内外に発信していましたが、最近では、社内から「出身母体」「統合」といった言葉は不要との声が挙がっています。もはや社員同士の「融和」を強調する段階ではありません。毎年実施している「モラールサーベイ」においても、やりがいを感じている社員の割合が昨年度から増加するなど、成果が目に見える形として表れてきています。今後は、多様な個性を認め合う「包摂」をさらに広げ、一体感のある取り組みを展開していきたいと考えています。全社を挙げてコロナ危機を乗り越え、エネルギーの安定供給やインフラ維持に尽力しようという機運が社内に高まっていることも頼もしく思っています。

統合新社の象徴的な施策として、2020年7月には先行してコーポレートブランドを刷新しましたが、これまで2社でそれぞれ展開してきたSSのブランドについても、2021年4月から「apollostation(アポロステーション)」に順次統一していきます。単にSSのロゴなどのデザイン変更だけでなく、POSシステムの共通化を順次進めることで、給油カードの相互乗り入れを可能にするなど、お客さまの利便性向上につなげてまいります。

「人が中心の経営」とダイバーシティ&インクルージョンの実践

当社グループの特徴は「人が中心の経営」です。当社は「企業価値最大化」という目的のための手段として「人材育成」が重要であるという考えを取らず、事業経営そのものが人材を育てることであると考えています。換言すれば世の中に役に立つ、尊重される人材の育成こそが当社グループの究極の目的であり、事業はそのための手段だということです。もちろん、人を育成するためには元手となる収益が必要であり、収益がないと事業は存続できません。しかしながら、2020年に突如として新型コロナウイルス感染症の影響が世界各国に広がったように、どのような未来が待ち構えているか誰にも分かりません。確かなことは、いざという時にしっかりとした人材が育っていれば、いかなる事態が到来したとしても必ずや打開策を見いだし、サステナブルな企業体を維持できるということです。常日頃から私のこうした思いを執行役員や部門長に伝えています。

人の力を最大限に発揮するためには、従業員の健康を維持・促進する「健康経営」が基盤となります。特に新型コロナウイルス感染症が収束しない中、従業員のみならず、お客さまや協力会社の従業員の方々などの健康・安全の確保を最優先としてきました。

さらに、差別やハラスメントのない、人権を尊重した職場環境を作り上げるとともに、性別や国籍の違い、障がいの有無のみならず、多様な価値観、キャリア、専門性を生かした「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」を経営ビジョンに掲げ、新たな価値創造に挑戦しています。

2020年4月の緊急事態宣言発令を経て、製油所など一部の製造現場を除き、最大9割の従業員が在宅勤務となりました。2020年夏に予定されていた東京五輪に備えて、早くから準備を進めてきたこともあり、比較的スムーズに在宅勤務体制へ移行できたように思います。現在でも5割近くの従業員が在宅勤務を継続しており、すっかり定着しています。今後も従来の勤務体制に戻すことなく、多様な従業員がより柔軟な働き方を選択できるよう、就業規則の改定をはじめ、会議や承認の仕方、ペーパーレス化といった社内ルールの見直しを進めていきます。

在宅勤務におけるミーティングはオンラインが中心ですが、対面式のコミュニケーションでしか得られない効用もあります。対面式、非対面式コミュニケーションそれぞれの長所・短所を理解し的確に使い分けながら、従業員一人ひとりが新たな働き方を実現していってほしいと思います。一人ひとりの生産性を高め、より創造的な仕事に注力することや、通勤時間が減少する分を家庭生活や趣味の時間に充てるといった生活の質の向上につなげてほしいと考えています。

加速させるESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み

地球環境・社会との調和は、エネルギー供給事業を営む当社グループとして、最優先で取り組むべきテーマだと認識しています。当社を含め化石燃料を扱うエネルギー会社は、環境に対してマイナスの印象を持たれがちですが、石油や石油化学製品がなければ人々の生活は決して成り立ちません。今後もエネルギーの安定供給に尽力するとともに、CO2削減に向けて不断の努力を続けていきます。

具体的な取り組みとして、石油製品の製造過程で生じるCO2を回収して、有用な燃料や化学品製造に活用するカーボンリサイクルや、産業廃棄物とCO2からコンクリート原料となる炭酸塩の製造技術の確立に向けた研究会を立ち上げて開発に取り組んでいます。石炭関連では、ゴムの木の端材を半炭化したブラックペレット(木質バイオマス)の供給事業を立ち上げ、石炭火力でのバイオマス混焼によるCO2排出量削減を目指すほか、石炭鉱山の採掘跡地にペレット生産に適した原材料を栽培してバイオマス燃料を生産するなど、さまざまな取り組みを展開しています。また、再生可能エネルギーのベンチャー系キャピタルや政府系ファンドにも積極的に参加し、CO2の排出量削減を強力に推進していきます。さらに、Next事業室や技術戦略室など社内に専門組織を設けるなど、長年にわたりCO2の取り扱いに長けてきた当社グループの強みを生かして、前述の通り、カーボンニュートラル社会への貢献を次世代事業の柱の一つに据え、活動を展開してまいります。

社会面においては、SDGs(持続可能な開発目標)で掲げられた目標と個々の事業を関連付け、当社グループとして重点的かつ具体的に取り組むべき重点課題(マテリアリティ)を明確にし、取り組みの加速につなげています。エネルギー供給を手掛ける私たちが社会と共存していくためには、「安全の確保」と「品質保証」が枢要な課題であることは申し上げるまでもありません。製油所・事業所の安全・安定操業を継続し、保安力の向上、安全文化を醸成し、強靭なエネルギー・サプライチェーンの構築に実直に取り組み、人々の生活や経済活動に必要不可欠な石油やガス、電力の供給基盤の強化に努めてまいります。近年、台風や豪雨、地震などの自然災害が頻発していますが、非常時にもライフラインの要としての役割をしっかりと果たしていきたいと考えています。

最後にガバナンスに関しては、多様な専門性とキャリアを持つ人材で構成されている取締役会にて、中期経営計画などの審議、長期的な課題に関する議論を行っています。また実効性評価として、2019年度から全取締役と監査役を対象とするアンケートを実施し、結果を取締役会で討議し課題の抽出に役立てています。今後も当社グループのさらなる企業価値向上へ向けて、さまざまな課題や取り組みに関して、活発な議論を行ってまいります。

ステークホルダーへのメッセージ

人々の生活に必要なエネルギーを低コストで効率よく供給することが当社グループの社会的使命に他なりません。そのことをただ漫然と続けるのではなく、強靭化や高度化を通じてエネルギーセキュリティを支え、ライフラインを守るとともに、競争力を高めることでお客さまによりメリットがある形でエネルギーをご利用いただく。そうした取り組みが結果として、当社の収益基盤の強化につながると考えています。

これからも当社は、どのような環境変化が生じても柔軟かつしなやかに対応できる「レジリエントな企業体」を目指し、「日本発のエネルギー共創企業」として、全てのステークホルダーの皆さまと共に新たな価値創造に挑戦してまいります。ぜひ、皆さまから当社グループに対し、忌憚のないご意見・ご要望をお寄せいただきたいと思います。引き続き格別のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

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出光興産株式会社
代表取締役社長

木藤俊一

出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ